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マガジムに再び、“護身術の巨匠”アヴィ・ナルディア氏がやってきます。
5月6日に開催される特別セミナーを前に、マガジムインストラクターのジュリアン・リトルトンがアヴィ氏にリモートインタビュー。
ジュリアン
アヴィ先生、またお会い出来て嬉しいです。昨年の10月に来日されて以来ですが、ここのところどう過ごされてましたか?
アヴィ
この間は世界各国に呼ばれて、ほぼ飛び回って働いていました。でも自分の仕事が好きなので、幸せですよ。好きなことをやってると働いてる気がしないです。
チェコ共和国、その前はブルガリア、その次はイタリア、ドイツと回って、そのあと今週末はスロベニア。このあとイースターで少し休みを取る予定ですが、終わったら小旅行を挟んで東京に向かいます。
ジュリアン
また日本に戻ってきてくれて嬉しいです!今日は5月6日のセミナーについて、どんな内容になるのか、マガジムの会員のみなさん向けに少しお話を伺えればと思ってます。
アヴィ
もちろん喜んで。今回は、日常生活で手に入りやすいものを使って、武器の攻撃から自分の身を守ることをメインテーマにします。例えば街を歩いていて、いきなり誰かに何の理由もなく襲われることがありえます。そのとき、傘や棒、靴、鍵、新聞紙など、即興的に「自分の武器」になるものを使って身を守る。
それを「インプロバイズド・ウェポン」(即興武器)と呼びます。武器というより「自分を守るためのツール」といった認識が正しいかもしれません。それを使って自分に力を与え、結果として護身力をどう高めるか、というテーマで5月6日はセミナーをおこなう予定です。
ジュリアン
素晴らしいですね。実は会員の一部の方からは「今回のセミナーはクラヴマガを何年もやっている人が対象ですか?」という声もあがってます。初心者でも参加できますか?
アヴィ
全く問題ないです。大歓迎です。むしろ経験がない人の方がいい場合すらありますから。何かしら「自分は知っている」と思い込んでいる人に限って、ときどき間違ったやり方を身につけていたりすることがありますから。経験ゼロの人は白紙の状態なので、逆に吸収が早いともいえます。だからこのセミナーは、経験者でも全くの初心者でも大歓迎です。
ジュリアン
安心しました!誰でも気軽に参加していいんですね。
今回のセミナーは3つのセッションに分かれていて、棒に対する護身、即興武器、そしてナイフに対する護身ですよね。それぞれ簡単に内容を整理したいと思います。
ジュリアン
まず最初が棒に対する護身です。素手vs棒や、棒vs棒、あとは周りにあるものを使って棒から護身する、などをやるのでしょうか?
アヴィ
そうです。街中で襲われうる攻撃として、一番わかりやすいのはバットのような棒状の武器ですよね。野球のバットとか傘とか何でも。そういう棒の形状の武器にどう対処するかをこのセッションではやります。
同時に自分が傘を持っていた場合は、相手がナイフや棒、または素手で襲ってきた場合でも、何もないより身を守れる確率が上がります。
棒に対する護身、または棒を使った護身のテクニックそのものは大事ですが、今回はものの考え方(コンセプトの組み立て方)を学んでもらうことを重視しています。
例えば「川を渡る」という課題を解決したいとします。そのための手段はたくさんありますよね。ボートで渡る方法もあれば泳ぐ方法もあるし、パラシュートで飛び越える方法もあればロープを渡る方法もある。
それぞれの手段を身につけることは確かに大切ですが、今回はそこに執着せず、それ以前の「ものの考え方」、つまり川を渡る方法としては何が適切か、を考えたいということです。
棒でいえば、棒の特性を知り、その攻撃からどう身を守るか、それを自分が持ったらどう護身に使えるかを包括的に理解することが重要です。棒を使った一つのテクニックを学ぶということではありません。
「考え方」に関連すると、ナイフの危険を例に挙げます。ナイフの攻撃に対する考え方は、いかに「ダメージコントロールするか」という考え方が重要です。
ナイフの攻撃から無傷でいるのがベストですが、現実的には難しい。そこで、いきなりの質問に驚かれるかもしれませんが、単刀直入に聞きます。もし切られるとしたら手を切られたほうがいいですか?それとも首ですか?
首を切られれば病院に搬送される前に命を落としてしまうかもしれないが、腕なら大怪我であっても生き延びられるかもしれない。手を犠牲にしても首を守る。そういう思考回路を学びます。その危険をどう評価し、自分の能力的に、または法的な側面も含めてどう対処するのがこの状況においてベストなのか。
ジュリアン
それは3つ目のセッション、ナイフに対する護身に関連する内容ですね。“ナイフvs素手”や“ナイフvs棒”あるいは持っているカバンや周りにある椅子、コーンなどで護身をするなど。“ナイフvsナイフ”は扱いませんよね?
アヴィ
そうです。セミナーに参加される皆さんは法令遵守される方に違いありません。ナイフを携帯すること自体が日本では違法でしょう。
手を使ってナイフから護身する方法をしっかり学んでいれば、いざ自分がどうしてもナイフを使わざるをえない状況になっても応用できます。だからまずは素手や周囲にあるものを使っての対ナイフ防御を学ぶのが何よりも優先ですね。
ジュリアン
なるほど。2番目のセッションについて伺います。少し定員が少なめですが、こちらも誰でも参加できるセッションです。
いわゆる「想定外の武器」について学ぶことがテーマです。たとえば「デートレイプドラッグ」のように、飲み物に仕込まれる薬物とか。普段“武器”とは思わないようなものを使われるケース、ということですね。凶器とはこういうものだ、という既成概念を取っ払い、どんな攻撃が考えられるのかを学ぶ。
アヴィ
そうです。ちょうどイスラエルでも数日前にあった事件で、フィットネスインストラクターがレイプドラッグを使って逮捕された、と。
今はそういう薬物を相手に飲ませる手口が実際に増えているので、そこも話します。
「他人が開けた飲み物は絶対飲まない」とか、そういうちょっとした注意が大きなトラブルを防ぐかもしれない。こういったことも含めて護身の幅広い概念を理解するのが大事です。
このセミナーでは護身のテクニックだけではなく、護身に必要な「考え方」を教えます。物事を点でとらえるのではなく、全体像を理解することが大事です。
ジュリアン
武器になりうるものって実はいろいろあるんだ、って発想を広げるいい機会になりますよね。会員のみなさんに、すごく勉強になると思います。
アヴィ
そうですね。私の知人で「ゴリラ級に強い」と言われる人がいて、キックボクシングとか極真空手の強豪とやり合って勝ったりする、本当に強い人なんですよ。でもその人がタイに行ったら、飲み物に薬を盛られてしまって、気づいたら下着姿で道端に放り出されていた…ということが2回ほどあったそうです。
つまり、どんなに強い人でも、ナイフや銃すら使われなくても、薬物一発で身ぐるみはがされてしまいます。つまり身を守るというのは強ければいいということではなく、意識すべきことがたくさんあるのです。だからこそ第2セッションで扱うような広義での護身術が重要なんです。
ジュリアン
私たちはどうしても打撃や関節技など「武道・格闘」としての護身に目が行きがちですが、それだけでは不十分ということですね。
アヴィ
そうそう。リングファイトなら「いまから戦うぞ」って準備ができますけど、街で花見を楽しんでたのに、急に襲われることだってありますから。そんなときは一瞬で気持ちを入れ替えないといけません。格闘技の試合と違って体格差だってわからないし、事前の計量もないわけです。格闘と護身は異なる点がたくさんあります。
そういう現実的な状況においては、競技として格闘技をやってる人であっても、身を守るために学ぶことが必ずあるんですよ。
ジュリアン
なるほど。では5月6日の3つのセッションは、すごく有意義になりそうですね。マガジムの会員の皆さんも楽しみにしています。
最後に何かうちの会員の皆さんに向けて伝えたいことはありますか?何かメッセージがあれば。
アヴィ
『自分はこのセミナーに参加できるレベルがあるだろうか』とか、『参加していいんだろうか』と悩んでいる方がいる、と聞いています。でも正直、ベテランだろうが初心者だろうが、関係ないです。
今回私が教えるのは、これまで学んできた技術とは異なる、ユニークな内容なので、完全な初心者でも経験豊富な人でも、みんなに役立つと思いますよ。
実際、私はこのあいだイタリアから戻ってきたばかりですが、イタリアでも同じ状況でした。私としては“大きなオーケストラ”みたいなもので、みんなで一緒に音楽を演奏している感覚ですね。経験者が初心者を助け、エネルギーをうまくバランスさせるわけです。
ある大柄な参加者がいましたが、その人最初はちょっと態度が横柄だったんですよ。私が小柄だから『俺のほうが強い』みたいに思っていたんでしょう。いろんな流派でトレーニングして、自分でも道場をやってた経験がある方でした。
最初に私がちょっと動きを見せてこらしめてあげたら彼、『えっ』と驚いて、そこから『うわ、レベルが違う』と気づいたみたいです(笑)
私が教える内容は、いくら経験ある彼にとっても完全な初心者状態なんですよ。だから彼は長年道場を経営していようが、ここでは1から学ばなきゃいけない。
先週末イタリアでやったセミナーも、初心者もいれば道場やジムを運営してるような人もいて、同じようにみな学んでいました。新しいことだから、誰にとっても初めてなんです。私だって、何か新しいことを習うときは同じです。その分野では初心者ですから。
ジュリアン
それは良いですね。どんなレベルでも学べると聞いて安心しました。上級者でも新しい学びがあるし、初心者にとっては何もかも新鮮。皆それぞれのレベルでスタートできるってことですね。
アヴィ
その通りです。多くの人が不安に思うのは、セミナー参加したら痛い思いさせられるんじゃないか、とかきついんじゃないかというイメージですが、実際は知識を伝えて教えることが目的なんです。だから痛めつけるようなことはしませんし、大変というよりは楽しく勉強する感じです。
私は参加者にはぜひノートを取ることを勧めたい。私自身、絵を描くのは上手くないんですが、セミナー中にメモや簡単なイラストを描いたりします。
わからないことがあったら「わかりません」と遠慮なく言ってほしい。まったく問題ないですし、理解してもらうことが何より大事ですから。
ジュリアン
素晴らしい。とてもいい機会になりそうです。ノートを自由に取ったり、疑問点があれば何でも気軽に質問していいというのは安心です。
アヴィ
アヴィ先生にお会いするのを本当に楽しみにしてます。サクラがまだ残っているといいんですけどね、到着した時に花が見られるように…。
アヴィ
そうですね。もし散ってしまっていたら、また来年に期待しましょう(笑)